ちどり庵主人の木造ヨットライフ

約10年間、ヨットから遠ざかっていた筆者が復帰するににあたり、憧れだった木造艇を手に入れ再開したヨットライフの顛末を綴る。

バッテリー上がる!(後編)

充電しないのは?

前回ギブアップしたことで、助っ人T氏に来てもらうことにした。T氏は現役時代には某航空会社で活躍していたメカニックで特に電気系に強いうえ、自身の所有艇で同型のヤンマーSV-5型エンジンを整備していた頼りになる助っ人だ。

T氏によると充電しない原因としては、一つはレギュレータの故障、もう一つはオルタネーターの故障(特に内部のダイオードが飛んでしまうとか)の二つが特に考えられるそうだ。そこで、テスターで配線のあちこちの導通を確認した上でエンジンを始動し、オルターネーターからの出力を確認の結果、オルタネーターが発電していないことが明らかになった。

そこで、T氏がかつて自身の艇で使用しようとストックしていた、中古品のオルターネータをリユースする事にした。

リユースする場合、発電能力もあるが、まず取り付けが合うかを確認する必要がある。合わないとブラケットを作り直す事になってしまう。その次に重要なのがベルトラインが合うかを確かめる。ベルトラインが合わないとベルトが掛からないのは勿論、ズレていると運転中にベルトが外れたり裏返ったりして危険だからだ。

オルターネータブラケット。取り付けピッチは新しいオルターネータも幸い一致した。

今回のリユース品はブラケットの取り付けが上側2ヶ所、こちらがベルトを張る時の支点になる。下側の1ヶ所はベルトを張る時のテンショナーステー固定用だ。

幸い上側2ヶ所のブラケット取り付けピッチは合ったのだがボルトサイズが合わなかった。ブラケットのネジはM8に対して、オルターネータはM10用の穴径なので、これは市販のカラーをオルターネータ側に入れて調整することで問題解決した。

M10孔をM8孔にする為のカラーを挿入。ホームセンターで売っている。

 

下側の取り付けは出しろ方向(オルターネータ軸方向)が合わず焦ったが、幸い丁度オルターネータ側の取付ボス厚さ分ズレている事が判明。

オリジナルでは取付ボスの裏側に固定していたステーを手前側に持ってくる事で何とかなりそうだが、ブラケットとステーの間に隙間ができるのでスペーサーが必要になった。

ワッシャーやらボルトやら挟んでみたが暫定以上のレベルにならず困ったが、ヤフオクでスペーサが結構色々出ているのを発見。これを落札して使用する事にした。それに伴いボルトもl=35mmに変更日している。

全切削のSUSカラー。ヤフオク(ネジの永井)で購入。

オルターネータ下側。アジャストバーの取付にはスペーサを噛ませた。

肝心のベルトラインは、幸運にもピッタリ合っている。しかし、オルターネータの体格が大きくなった事に伴い、ベルトの張り代がギリギリ(手持ちのベルト長さ、ステーの調整しろ、エンジンルームの壁とオルターネータの隙と全て)なので、ベルトが伸びて来たら早めに交換せねばならない。

元々使っていたベルトを組むと、ほぼフルアジャスト状態。

で、早速オルターネータを仮固定して発電を確認したが、発電しない??

改めてサービスマニュアルの配線図と比較すると、行き先不明のハーネスが何本かある様だ。特にバッテリーの横を横切ってチャートテーブル横のコントロールパネルへ行っている黒いハーネスは良く判らないが、いずれこれをを開けて確認する必要があるかもしれない。それはさておき、発電しなくなったのと共に、イグニッションキーの付いているインスツルメントパネルに有るチャージランプも消灯している事が判明。T氏に教えてもらったのだが、オルターネータが発電するのは、バッテリー電圧とオルターネータの発生電圧に差がある時で、コントロールパネルのチャージランプが抵抗(3Wなので48Ω)になって、これに因る電圧差で発電するのだそう。ならば、電球を変えれば済む話なのだが、電球を取り替えるためにカバーを外すと、パネルそのものが崩壊しそうなので、今回はハーネスの間に抵抗を入れることにした。

いンスツルメントパネル。左下の穴はフューズ。外すときに劣化したケースが割れてしまった。

カバーを外せば電球も交換できるハズだが…。

さて、これにより発電を確認すると14V位発電している。オルタネータ交換により、充電しない問題は一件落着となった。やれやれ。

 

今回外した部品。レギュラータ〜オルターネータ間のハーネス。レギュレータ(日立製)本体、オルターネータ(日立製)。

 

 

 

 

 

 

 

バッテリーがあがる!(前編)

エンジン始動不良

エンジンの始動が不良であった事は、前にエンジン整備の回で触れたが、その際にはスターターモーターの交換で解決したと書いた。艇を回航して以来、新しい泊地での舫の取り回しの調整や、雨水による浸水問題の解決などを続けていたため、出航したのはわずか1回のみ。あとエンジンの調子確認と充電を兼ねて数回エンジンを掛けていたのだが、とある4月末の週末にエンジンを掛けてみようとエンジンキーをひねるが、カチンという音だけでセルが回らない。またエンジン始動不良の問題が再発したのである。

はて、セルは交換して以来調子が良かったし、どうした事かと思いながら、デコンプレバーを引いて再度エンジンキーをひねるとセルモーターは回り始めたが弱々しく、エンジンの回転が十分上がらない。そして、何度か試すうちについには回らなくなってしまった。

バッテリーは、念の為に昨年の回航前に新品に交換しているので、今までの使用状況からすると電圧が下がるはずは無いのだが…。しかし実際掛からないので、出直してバッテリーを充電することにしてその日は引き上げた。

原因は充電不良

泊地のボートパークは、水は引かれているが陸電が無いので、改めてモバイルバッテリーと充電器を持参。充電を開始してみると、充電器の電圧インジケータの針は完全にレッドゾーンを指し、バッテリーが上がっている事が判明した。結局、リチウムイオンモバイルバッテリーの電気を全て使い果たし、一応グリーンゾーン迄充電する事ができた。エンジンキーをひねると、当然ながらエンジンはいつも通り始動できた。すなわち、新しいバッテリーの電気を、今まで始動の度に使い続けて、ついに使い切ってしまったと云うのがエンジン始動不良の理由だった。が、問題は何故充電できなかったか、だ。

モバイルバッテリーの電気を全て使い切ってしまった!

充電不良は、オルタネータの不具合かレギュレーターの不具合が考えられる。(本艇のエンジンは古いので、現代のエンジンのようにレギュレータ一体式のオルターネーターではない)

しかし、あいにく主人は電気系は不得意科目なので、テスターは持ってはいるものの、どことどこの導通や電圧を計れば原因が判るのかさっぱり分からないので、助っ人を呼ぶ事にした。とほほ。

エンジンの整備

ヤンマーSV5型エンジン

f:id:chidorianshujin:20220412223226j:plain

ヤンマーSV5型エンジン

我が愛艇にはヤンマーSV5型エンジンが搭載されている

スペックは、立型水冷4サイクル1気筒、連続定格出力5Ps(1700rpm)、実用最大出力12Ps(3000rpm)だ。数年前にOHしたとの話を聞いているが、エンジン自体調子は良く、特に手を入れる必要はなさそう。なので、オイル交換と劣化している燃料ホースの交換くらいをメニューとして考えていた。

エンジンオイルはエンジンに予め備え付けられている廃油ポンプを使用して交換するらしいが、今回は山名ボートサービスさんから借りたオイルチェンジャを使用した。ポンプで真空にして吸い出すものだ。エンジンオイルはそもそも20Wと硬い上、ディーゼルエンジンでは劣化すると更に粘度が上がって硬くなるなるので、暖気後で無いと抜き取ることが出来ないので、暫くはエンジンを運転してから作業を行なった。

オイルチェンジャーは作業が楽なのだが、オイルレベルゲージの孔からチェンジャのホースを差し込み、一旦エアを吸っても、さらに弄るとナンボでも抜ける。ちなみに潤滑油量は3.5Lだ。改めてマニュアルを見ると、どうやらオイル交換用に廃油口プラグと云うものが別にあったらしい。次回交換時には良く確認したい。

 

燃料/油水分離フィルター取り付け

何せ古い艇なので、燃料タンクのフラッシングを考えていたが、時間の関係上出来そうにもなく、といって、燃料タンクの底に溜まった水やスラッジでエンストするのも怖いので、水フィルターを兼ねた大型の燃料フィルタを取り付けることにした。

f:id:chidorianshujin:20220412223457j:plain

燃料フィルタはネットで探した物。大体が大型のパワーボートディーゼルエンジンに対応したものなので、最大出力僅か12Psと1/10程度の出力しか無い当艇にとっては、十分以上に大きい。従って、取り付けレイアウトがやりやすそうで、水抜きバルブが付いている商品を選んで発注した。

ホースは山名ボートサービスさんに有ったテキトーなホースから燃料用の物を選び、現合あわせて切って使用した。

燃料はタンクから重力で落ちてくる原始的なタイプなので、フィルタはエアが噛まないようにタンクに対して低い位置に取り付け、またホースの取り回しもエンジンルームのカバーや補機ベルトに当たらないように注意して配管した。

フィルター本体はエンジンルーム壁にボルトナットで取り付けたが、緩まないようにナットはロックナットを使用している。

 

純正燃料フィルタエレメントの交換

f:id:chidorianshujin:20220412223704j:plain

手こずったのは、なんとエンジン本体に取り付けられている燃料フィルターだ。そもそも、燃料ホースのバンジョー取り付け座の高さが低く、ホース固定用のホースバンドとフィルタ固定用のネジキャップの隙がなく当たる設計になっており、とても締めにくく何度閉めてもエアを吸ってしまう。余り何度やってもうまく行かないので、フィルタ全体をエンジンから取り外して確認してみた所、なんと、エレメント本体が中で突っ張って、キチンと締まっていないことが判明した。ヤンマー純製品のエレメントで一般的な(104500-55710)ではSV5エンジンでは微妙に長さが長く、フィルタケースの底に当たってしまう。微妙に短い(104800-55710、O-リング:243210-0050)を使用することで解決したが、先のホースバンドと当たる設計といい、ヤンマーの思想はどうなってるんやら。また、エンジンの燃料ポンプなどのバルジチューブのパイプ部分の長さが短く、ホースバンドの幅に対して余裕が無く、基本的な設計がおかしいところが散見される。大丈夫か、ヤンマー!と言っても50 年前だけど。。。

 

スタータモーターの交換

f:id:chidorianshujin:20220412224039j:plain

古い日本電装製スタータモータ

エンジン本体は元気そうだが、スターターモーターはちょっと難があった。エンジンキーを捻っても、セルが回らず、カチっと云うソレノイドの音もしない。が、しつこく何回もやっていると回り始めるといった程だ。どうやらソレノイドの劣化の様なので、スターターモーターのOHが必要かと思っていたところ、山名ボートサービスさんの在庫品から使用できる中古品が有ったので、組み替える事にした。

f:id:chidorianshujin:20220412224214j:plain

スタータモータはオルタネータの奥で工具が入らない

f:id:chidorianshujin:20220412224312j:plain

オルタネータを外して新しいスタータモータを取り付けたところ

しかし、これも整備性が悪く、手前にあるオルタネータを取り外してからで無いと全く作業できず、結構手間取ってしまったが、何とか無事交換することができた。

ヤンマーは部品在庫の持ちが良いらしく、50年前のエンジンでも今のところ部品手配に不自由はしていないが、そろそろ欠品部品も出てきているらしい。故障の内容によっては、今後エンジンの載せ替えが必要になることもあるやもしれぬ。その様な故障が起こらないことを祈るばかりだ。

 

バウハッチとスターンハッチの塗装

バウハッチの塗装を行う

本艇ではフォクスル部とスターンビン部にそれぞれ木製のハッチが設置されており、共に本来ニス仕上げの様だが、主人が引き継いだ時には、木部用塗料が塗布されている状態だった。

ハッチは一枚板ではなく、無垢のチーク材を2〜3分割した物を合わせて貼り合わせてある。この板の間には、恐らく夏の暑さで板が変形するのを吸収するために、ゴム板が挟んであるが、この間から雨水が洩るらしく、内側からテープが貼ってあった。(下の写真)

 

f:id:chidorianshujin:20220307215315j:plain

今回の補修では、このテープが無くても済む様に防水性を確保したい。

 

下の写真は塗装をサンダーで落としたところだが、かなり板が反っており、均一面が確保できなかったので、ニス仕上げは諦めてペイント仕上げとすることにした。

f:id:chidorianshujin:20220307214304j:plainハッチの縁と合わせ目には木工用のエポキシパテを充填した。

 

f:id:chidorianshujin:20220307214344j:plain

一旦取り外して、インターナショナル・エバデュアを塗布し、防腐処理を行う。

エバデュアは、倍くらいに薄めた状態で2回、現役で2回の4回塗り。

 

f:id:chidorianshujin:20220307214410j:plain

更にエポキシ樹脂の塗布を行いサンディングし、平滑に仕上げる。

金具の取り付けボルトの入る孔は、コーキング剤が切れない様に口元に面取り加工を施す。

f:id:chidorianshujin:20220307214543j:plain

f:id:chidorianshujin:20220307214616j:plain

 

ハッチの側面はニスで仕上げ、上面はハルと同じ白色のウレタン塗装をした上に、デッキと同じノンスリップ塗装施し、なかなか良い感じに仕上がった。

しかし、この後夏を越すと、板の継ぎ目部は熱で膨張したせいで筋状の山ができてしまった。

f:id:chidorianshujin:20220307214442j:plain

水漏れに関しては万全を期したつもりだったが、結局雨が降ると、たいした量ではないがハッチの下に少し水が溜まるので、結局継ぎ目にテープを貼っている。トホホだ。いずれ内側からシーラーを詰めて、水漏れを止めるつもりだ。

f:id:chidorianshujin:20220307221054j:plain

 

スターンハッチに塗装を施す。

スターンハッチはバウより状態が良かったので、ニス仕上げとすることにした。

バウハッチと同様サンディングを行ったあと、板の継ぎ目部とハッチの縁部にウッドパテを充填する。

f:id:chidorianshujin:20220307221513j:plain

 

パテを施した後は、これも同じくエバデュアを塗布。

f:id:chidorianshujin:20220307221546j:plain


その後ニスもバウハッチ同様2回塗りして仕上げた。

f:id:chidorianshujin:20220307221816j:plain

 

こちらも残念ながら、水漏れテープは無くせなかった。ハッチ右奥のグレーの塗装状の物は、ハッチ枠が腐っていたため、エポキシ樹脂で漏れ止めを行ったため。

f:id:chidorianshujin:20220307221847j:plain

木製のハッチは、オリジナルが無垢の板材なのでこれを生かしているが、本来は伸びや反りに強い合板の方が向いているのだろう。

 






 

 

デッキは腐るよどこまでも(最終章)コックピットハッチ編

なぜかビルジが溜まる⁇

丁度スターンデッキの腐りを修理していた時期は梅雨の最中で、合間を見ながらの作業だった。前回までの修理の結果、スターンデッキの水密は完璧のハズだったが、、、なぜか、雨が降った日の翌日にはビルジが溜まる。

 

f:id:chidorianshujin:20220129164723j:plain

写真は左舷側セティバースとキャビンフロアの板を外したところ。(写真下側がセンター)写真の様に、上のストリンガーには水が溜まって光っているが、フロアの板を外したボトムのビルジ溜まりは、上の方は乾いているのが判る。

雨の降った翌日には、なぜかこの写真の様にビルジが溜まっている。前回直したスターンデッキ付近やサイドデッキにホースで水を掛けてみても、水は入ってこない。

更に不思議なのは、ボトムで一番深いビルジ溜まりに水が溜まるのは分かるが、写真の様にキールと並行したストリンガーの上側に水が溜まるのだが、その水がどこから来るのかがわからなかった。

 

コクピットハッチの枠を修理

先に述べた水の経路は分かっていなかったが、コックピットにあるスターンチューブメンテナンス用のハッチが設けられている。これも考えてみると、コックピットに水が大量に入ると船内が水浸しになる危険があるので不思議なものだが、スターンのアンカーローラー同様、初代オーナーのコダワリだったんだろう。

f:id:chidorianshujin:20220212233753j:plain

 

f:id:chidorianshujin:20220211230630j:plain蓋を取ってみると、周辺がご覧の様に腐っているので、これを修理することにした。

 

f:id:chidorianshujin:20220211231254j:plain

ハッチ両脇の中央付近に金具があるが、右舷側の金具の辺りはかなり痛んでいるので、ここは切り欠いて入子を入れることにする。あとは腐っているところを取り除いて、ウッドエポキシで埋めて補修した。

左舷側は一見痛んでいない様に思えたので、ふちの部分だけ削り取ってウッドエポキシで仕上げるつもりだったが、ドライバーで突いてみると意外とぐっさり刺さり、ええいままよと削って行くと、なんと無くなってしまった。

f:id:chidorianshujin:20220211232038j:plain

 

腐った木部を削り取ったあと、インターナショナル・エバデュアを塗布したところ、コックピット床に貼ってあるグラスマットとこの枠の間から船内に垂れて溢れてくることが判明。丁度水が溜まっているストリンガー材と同じ位置と一致し、やっと、水が入って来る場所が分かった。

f:id:chidorianshujin:20220211232630j:plain

グラスマットの端部と枠体の接しているところから、グラスマットの裏側にかけて腐っていたので、その部分を取り除き、ウッドエポキシを充填。

f:id:chidorianshujin:20220211232837j:plain

グラスマット面にかけても痛んでいたので、この面にもウッドエポキシで面をコーティングし、この面に新しく製作した枠材を接着する。

f:id:chidorianshujin:20220212234301j:plain

ハッチ両側は痛んでいるところに収まる入子材を製作し、ウッドエポキシをたっぷり塗って接着した。ハッチの左上と右下の角は、ウッドエポキシをそれっぽい感じに盛って整形した。

 

f:id:chidorianshujin:20220212234812j:plain

ウッドエポキシのはみ出たところは#100のペーパーでならし、元の材料とスムースにつないでやる。初めは当初のとおりニスで仕上げようかと思ったが、耐水性も必要だし、そもそも入子の部分やエポキシで色目も変わっているので、ウレタンペイントで仕上げようと思う。

 

さてこの補修の結果、現在のところ雨の降った後でも、ビルジはドライに保たれているので、一見落着だ。

 

f:id:chidorianshujin:20220311213818j:plain

塗装前に、欠肉の大きい部位はウッドエポキシで、小さいところはウッドパテを盛った後、#180のサンドペーパーに当て木をしてサンディングを行い成形する。

塗装前にはペイント薄め液で汚れを取り除く。

 

f:id:chidorianshujin:20220311213927j:plain

2液性ウレタンペイントで塗装。形状が凸凹しているので刷毛で塗装。塗装後30分くらい(外気温は15 ℃くらい?)でほぼ硬化したので2度目を塗装。

 

 

デッキは腐るよどこまでも(その6)スターンデッキ編

よもやよもやのスターンデッキの腐り

今まで補修していた箇所は予め聞いていたか、意味ありげなガムテープが貼ってあったりなど、言わば予見性があった。ところが、フォアデッキとサイドデッキ,ドッグハウス周りが片付き、やっと新しい母港への回航が見えてきたと思っていたところが、一見何も問題が無いように見えていたスターンデッキの腐りが発覚した。

しかし思い起こせば少し予見は有るにはあった。それはスターンの塗装をしている時、バックステイのチェーンプレート取り付けボルトの頭が外側から樹脂で埋めてあるのだが、その樹脂の隙間から水滴が何度拭っても染み出していた。思えば、ハルの木部と表面のグラスファイバーの間に、どこからか水が染み込んでいて、それが湧き水の様に染み出していたわけだ。

ハルと船底の塗装も完了し船名も入り、スルハルの点検とボールバルブ,ヘッドの交換も終わったので、やっと船を水面に降ろす事になったのだが、作業のために陸置きしている間、船台に上がった船へ上がる為にスターンに梯子を掛けて出入りしており、その間、何となくスターンデッキを踏むと心なしか踏みごごちが柔らかい感じなのが気になっていたので、船を海面に降ろし、少し沖に出てエンジンの調子やスターンチューブのグランドパッキン周りの水漏れの調子などを確認したのち、Yボートサービスの桟橋へ船をつけ、Y氏と共にスターンデッキ回りの点検を行った。

本艇には、スターンに真鍮性のフラグポールベースが取り付けられているのだが、これを押してみると何だかグラグラしているので、思い切って少し力を入れると、なんと無残にも捥げてしまった。

 

f:id:chidorianshujin:20220208231711j:plain

 

f:id:chidorianshujin:20220208231914j:plainスターンパルピットの取り付け座はチーク材で作られていたが、ボルトを外したら粉々に。

 

f:id:chidorianshujin:20220209222142j:plain

 

f:id:chidorianshujin:20220208232145j:plainせっかく修理完了したと思っていたのに、パルピットもライフラインも外して、またこんな姿に逆戻りだ。

 

湿気がたまれば木は腐る

そもそも何故スターンデッキがこんなに腐ってしまったのか?

ヨットのデッキは、波をかぶった時の海水を排水するために、大体に於いてバウからスターンに掛けて下り勾配になっている。と言うのも、バウは当然のことながら波を切る必要があるので細く尖っており、その為浮力の確保とバウが波に突っ込んで沈まない様にフリーボードは高い。一方のスターンはフラットな形状で浮力があるので、比較的フリーボードを高く取る必要が無いので、その様な設計になるわけだ。

と、言う訳で、バウからスターンへ水は流れてくる。これが海水のみなら良いのだが、停泊中に雨が降れば、当然真水の雨水がスターンに流れてくるため、その水は舷側から排水せねばならないので、ガンネルには排水孔が設けられているのだが。

 

f:id:chidorianshujin:20220209221707j:plain

 

しかし本艇の場合、上の写真を見て欲しいが、左舷側スターンに立派なアンカーローラーが取り付けられている。どうやらこの艇を建造したときに、オーナーのこだわり追加されたもののようだ。このアンカーローラーはチーク材の立派な台を介してデッキに取り付けられているのだが、そのため左舷側最後部の排水孔は、このアンカーローラーの台座の下に隠れてしまうこととなり、一応、台座の下に排水孔は掘ってあるのだが、細く長い孔はメンテナンスを少し怠ると何か異物が詰まり、役に立たなくなることは容易に想像できる。実際、主人が手に入れた時点でも孔は詰まっており、ワイヤーを通すと土埃の固まったものが出てきた。

結果、スターンデッキの最後端部に水が溜まりがちになって、腐ってしまったものと思われるが、今回不具合部を切除してみると以前にもこの辺りを修理した様な痕跡が残っていたので、この艇の持病であったのだろう。

 

f:id:chidorianshujin:20220209221549j:plain

 

作業を始めた当初は、スターンハッチから後ろの部分だけが腐っていると考えていたのだが、そんな甘いものでは無く、スターン付近のデッキ骨材とデッキを剥いで貼り直さなくてはならなほどの大工事となってしまった。

f:id:chidorianshujin:20220209223208p:plain

チェーンプレートを取り付けている構造材の周辺は、デッキ取り付けの為の骨材がなくなってしまった。

 

f:id:chidorianshujin:20220209223354j:plain

骨材は新たに作り直して取り付けられた。

 

f:id:chidorianshujin:20220209223506j:plain

その上に分厚いデッキの合板を、曲げながら固定。センターが高く両舷側へ下がっている。

 

f:id:chidorianshujin:20220209223602j:plain

ビット周辺も過去に補修していた様だ。今回は痛んでいた部分を除去して板を貼り直している。

 

f:id:chidorianshujin:20220209223728j:plain

板の上にはグラスマットを貼り付け防水。

f:id:chidorianshujin:20220209223747j:plain

さらにエポキシ樹脂を全面に塗布して、デッキ補修完了。

 

f:id:chidorianshujin:20220209223830j:plain

ガンネルから続くスターン部のガーニッシュも下の写真の様にボロボロに腐っていたが、何とかジグの型を取り、新作して取り付けることが出来た。このくらい大きなサイズのチーク材はなかなか直ぐには手に入らないので、ラッキーだった。

f:id:chidorianshujin:20220209223901j:plain

 

スターンデッキ修復作業完了。バックステーのチェーンプレートとスターンパルピットの取り付けとガンネルの隙が少なかったので、全体に20mm前に出すことで隙を確保する。

f:id:chidorianshujin:20220209223938j:plain

 

f:id:chidorianshujin:20220209224116j:plain

バックステーチェーンプレートは取り付け座を変えて前方へ移動。

f:id:chidorianshujin:20220212233148j:plain

スラーンパルピットを20mm前方に移動したので、スターン側だけで無く、両舷側の取り付け部もガンネルとクリアランスを取ることができた。

 

f:id:chidorianshujin:20220209225627j:plain

やっと大工事が終了したが、スターンハッチの水切り溝からロッカー内部へ漏れが有ることが判明したので、水切り溝にもエポキシ樹脂を流し込み防水を施した。

 

 

 

デッキは腐るよどこまでも(その5)スプラッシュガード編

スプラッシュガードとは

波や風の強い日にヨットに乗ったことのある人ならご存知のとおり、船が波を切った時にはスプレイが結構上がり、それがデッキ沿いに飛んできて、コックピットに居る人にそれが直撃したり、キャビンに入るコンパニオンウエイのハッチが開いていたりすると、キャビン内も濡らしたりするのを防ぐ(なんぼか緩和する)のが、スプラッシュガードの役割です。

本艇の場合、今は骨組みだけになっているが、オーニングという折りたたみ式の風防が設置されていて、その裾を固定する役割も担ったりします。

 

f:id:chidorianshujin:20220207222408j:plain

スプラッシュガード(写真右後方の木目の部分。修復ニス仕上げ後)

 

スプラッシュガードで痛んでいたのは

外面は腐りはないが、やはり日光や潮風で劣化しひび割れなどがあった。一部エポキシ樹脂で固め、ニスで仕上げる。

問題は内側で、基本的には水は逃げるはずで、しかも前オーナーはカバーを掛けていたのでそうそう湿気そうにも無かったのだが、やはり一部腐っていた。そのままにしていてもそう気になるところでも無かったが、ニスで仕上げるにはそのままにして置くにもいかず、手を入れることにした。

 

f:id:chidorianshujin:20220207223503j:plain

付け根の太い部分が腐っている。溝は、オーニングの下端を咥える溝だそうだ。

 

f:id:chidorianshujin:20220207223806j:plain

左舷側も似た様なもので、隙間をウッドパテで埋めようかと思ったが、範囲が大きすぎて断念した。

 

f:id:chidorianshujin:20220207223709j:plain

浮いていた部分を除去したの図。右舷側も同様に痛んだ部分を除去し、入子を入れる。

f:id:chidorianshujin:20220207224156j:plain

大工さんに入子を作ってもらい、エポキシウッドパテで固定。この状態ではまだ入子と原材の間には段差やズレがある。

f:id:chidorianshujin:20220207224404j:plain

ペーパーで段差ズレを修正し、滑らかに仕上げた。

 

f:id:chidorianshujin:20220207224516j:plain

右舷側も同様に入子をウッドパテで固定し、隙間を埋める。

f:id:chidorianshujin:20220207224624j:plain

ペーパー仕上げ後。

あとは、色目を合わせるためにオイルステインを塗布後、インターナショナル・エヴァデュアを塗布し、ニスで仕上げ完了。

さてさて、これで修理完了のはずだったのだが、この後、想定外の大問題が発覚したのであった。