ちどり庵主人の木造ヨットライフ

約10年間、ヨットから遠ざかっていた筆者が復帰するににあたり、憧れだった木造艇を手に入れ再開したヨットライフの顛末を綴る。

一年ぶりに出港したものの、港から出られず…。

メンテナンスと舫の調整に追われた一年

思えば、昨年の8月に姫路から西宮に回航してきておよそ一年が経つが、なんと出航したのは一度きり。あとは、船のメンテと舫の調整ばかりしていた一年だった。

もっとも海といえども7月〜9月中旬までは殺人的な日差しと熱気で、オーニングを張っても何にもせず、ただ船の上で潮風にあたって帰るだけという事も何度もあったが。

こんな調子で船に通っているうちに、それでも雨漏りは治り、エンジンも発電できる様になって、舫もやっと整った、ただ、未だ一人でこの船を出せるほど習熟できていないので、誰か乗ってくれる機会があったら、久しぶりに船を出そうと考えていた次第。

そんな、9月のある週末、桟橋の2艇向こうのオーナーが明日も来るから、お天気が良ければ乗ってくれると言う。幸い、明日は午前中はお天気が保ちそうなので、翌日10時にと言う約束をして、久しぶりに船を動かすことにしたわけだ。

一年ぶりの出航。トホホの帰還

と言う訳で、くだんののオーナーと、たまたま居合わせた同じ桟橋のもう一人のオーナーとの3名が乗り込み、波千鳥久々の出航とあいなった。と言っても、時間の都合もあり、機走のみで阪神高速道路の橋の先程度まで行って引き返すだけの出向だが、近日中に行いたい「牡蠣落とし」のために須磨YHへ回航する予行演習も兼ねているので、自分としてはそれなりの想いあってのことで有る。

エンジンは調子良く指導。アスターンで離岸するが、長期係留によりフジツボが着いてペラが水を掻かない心配があったが、ちゃんと船は動き出し舵効きも問題ない。

港内の広い水面に出て、少しエンジン回転を上げると白煙が少々出る。やはりフジツボが着いて抵抗が大きいのかもしれない。しばらくそのまま航行するが、阪神高速道路の橋が見えてきた辺りで、突然エンジンが停止した。てっきりアクセルレバーが何かの拍子に戻ったのかと思ったが、そうではなかった。再度、始動を試みるがエンジンは掛からない。

さてはエアを噛んだかと考え、インジェクタへ入る燃料チューブのユニオンを緩めクランキングしてみたが、燃料はおろか泡すら出ない。燃料ポンプか燃料噴射ポンプに問題があるのかもしてない。とすると、直ぐに復旧できるものでは無い。

やむを得ずセイリングでバースに戻る事とし、メインセイルをあげる事にしたが、今度はハリヤードが固くてセイルが半分程度しか上がらない。

実は、セイルを新調するにあたりレイジージャックにしたのだが、マストのグルーブの形状がスライダーにマッチしていない様で、以前からもうひとつスムースにセイルが上がらなかったのだ。そこへもってきて一年もセイルを上げずにいたので、スライダーの滑りが更に悪くなり、ウインチを掛けてもまともに上がらない状況に陥った様だ。

セイルも、出向せずともバースに係留したまま時々は上げておきたいと思っていたのだが、案外と風の強い日が多く、機会をずっと逸してきていたのが仇となってしまった。

そんな中途半端なセイルで何とか帆走し、甲子園側にある一文字ヨッチクラブ横の岸壁になんとか着眼することが出来た。しかし、ここは本船陽の岸壁なので小さなヨットが着けるには何かと具合が悪く、ヨットに適した場所へ早く移動する必要があったのだ。

その時、先ほどからの顛末を見ていた、一文字ヨットクラブの方が岸壁から声を掛けてくださり、バースのところまで曳航してくれる事になり、本当に助かりました。

と言う事で、友艇に曳航され、トホホの帰還となった次第。

トホホの曳航中

今回、エンジンはバースに係留した状態で時々運転はしていたものの、何分古い事もあり、エンジンが止まった原因を改めて原因を調べる必要がある。本当にポンプが悪いのか、それとも他に原因があるのか?

それと、此の様な機関トラブルの際に頼りになるのは、ヨットの特権であるセイルだが、これもダメと言うのが今回最も情けない事であった。今回の事を受けてこの秋、面倒くさくて避けていたが、スライダーを一個一個ヤスリ掛けしてスムースにマストのグルーブを通る様に調整する事を決心した次第。

今回いろいろな方のお世話になり事なきを得たが、それにしてもやはり、いきなり一人で出さなくて良かったと、つくづく思った次第である。