ちどり庵主人の木造ヨットライフ

約10年間、ヨットから遠ざかっていた筆者が復帰するににあたり、憧れだった木造艇を手に入れ再開したヨットライフの顛末を綴る。

デッキは腐るよどこまでも(その4)ドッグハウスハッチ編

ヴァン・デ・シュタット31のドッグハウス

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この頃のヴェン・デ・シュタット設計のIOR艇のドッグハウスは、本艇の様なドーム形状のものがある。当時のIORレース艇は、S&S30が代表する様に、フラッシュデッキスタイルが主流だったが、ヴェン・デ・シュタット31は、排水量がわずか2.6tの超軽排水量艇なのでフリーボードが低くデッキの下は1mほどのヘッドルームしか無い為、流石にこれではキャビン内が物置以外に使えなくなるので、チャートテーブル・ギャレーの周りだけこの様なドーム形状のドッグハウスを設けたものと思われる。当時の舵誌の試乗記事には、キャビンの写真は有るものの、居住性については何も語られていないので、この辺りの真意は不明だ。

とは言え、このドッグハウスの上部に設けられた四角い箱状の部分でも、ヘッドルームは1.6mにも少し足らない。この四角い箱の部分に本艇ではハッチが設けられているが、オリジナル設計ではこのハッチは無かった様だ。このハッチを開けると、主人のばあい丁度ここから頭がすこし出るので腰を下かめなくても良いので楽だし、夏場は意外と風が入って来て涼しくて良いと、メリットは有るがここにも問題があった。

 

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ハッチの前のウッドガーニッシュが回っている下あたりに、影になっていて判りにくいが小さな孔が見える。これが実は大変な状態だった。

 

湿気が溜まれば木は腐る

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ウッドモールを外してみるとご覧の通り、チーク材の枠がかなり腐っている。

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内側から見るとグラスマットを巻いてある中から腐って来ている様子が分かる。グラスマットは防水には効果的だが、湿気のある部位に対して完全に巻き切る事ができないと、むしろ逆効果だ。

 

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ほじくってみると上部の白いところは簡単にもげてしまい、チークの枠体も半分くらい無くなってしまった。当初は腐っているところだけ除去して、エポキシ樹脂を充填して修理しようと考えていたが、これでは如何しようも無い。

 

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枠体の側面の材も前端はやはり腐っている。白い布切れみたいに見えている部分がグラスマット。前方下に見えるのは水抜き用の孔。

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左舷側のハッチ枠体からウッドモールを外した状態。こちら側は右舷側より大分マシだ。

 

枠体全体を作り直さないといけないかと、迄絶望的な展開になりかけたが、結局大工さんにお願いして、この枠体の腐っているところを丸ノコですっかり切り取ってもらい、そこに新しい木材を現場合わせで嵌め込んでもらうことになった。

 

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新しい木材を嵌め込んだところ。前にある細い棒状のものはウッドのモール。

 

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痛みの少ないところはウッドエポキシを盛って補修。

 

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側面の枠材(特に上面)と前方の新しく作成した材とが上手く合うか大工さんはかなり気にしていたが、なんとか上手くいった。

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ウッドモールとの位置合わせもOK。黒いザラザラはエポキシ樹脂の充填剤で隙間を埋めてある部分。

元々はこの枠体部分は木目仕上げだったが、木をはめ込むのに丁度良い大きなチーク材が無く、材が変わってしまったことや、塗膜の耐光性を上げて防水性を確保したかったことから、ここはウレタンペイントで仕上げた。見た目も以前より軽やかで良くなったと思う。

 

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ドッグハウス周りでは、あとスプラッシュガードの一部に腐りがあるり、これは次回に続く。

 

デッキは腐るよどこまでも(その3)シュラウドベース左舷編

数年前にデッキ腐りを修理した左舷側シュラウドベースだが

前回の修理の際には、デッキ腐りは修理していたのだが、シュラウドベース位置はオリジナル通りでチェーンプレートはハルに取り付けられていた。

そのため下の写真の様に、シュラウドベースとガンネルとの間が狭く、少しの土ぼこりやゴミなどでこの部分に雨水などが溜まり易くなっていたので、既にチェーンプレート周りは少し腐り始めていた様で、工具でほじくると脆くなった木部が木屑として剥がれてきた。

 

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キャビン内側から見ると、ボルトは既に外されているが、チェーンプレートがビーム材に取り付けられていたことが分かる。また、デッキ貫通部は少し腐り始めていたことも確認できる。

 

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チェーンプレートを取り外し、デッキ貫通部に板を貼り付けた状態。幸い未だ右舷側の様に、チェーンプレート取り付け部に腐りはなかった。

 

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右舷側と同じ様に、ビームに補強材を追加。元々あったシュラウドベースとハルビームに固定していたボルトに補強材を固定。

 

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チェーンプレートのデッキ貫通部は、デッキ側を面取り形状に削ってある。これはコーキング材を塗布した時に、金具との間が薄くなりコーキング材が切れて水が侵入することを予防する為。

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シュラウド移設完了後。チェーンプレートを右舷側同様船体中央側に動かすことができたので、ガンネル部と十分隙間が確保できた。

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右舷側同様、補強材をビームに取り付けたことで、チェーンプレートは船体前後方向に対して直角方向に取り付ける事が可能になり、シュラウドベースを船体中央側へ動かす事ができた。

これで、シュラウドベース部がデッキ腐りの原因になる可能性は少なくなった、ハズ。

 

デッキは腐るよどこまでも(その2)シュラウドベース編

 

右舷シュラウドベースの状況

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写真で、シュラウドベース部右下に茶色いものが見えているが、これは応急的に水漏れを止める為に貼られたガムテープ。このテープから写真下方向左右にデッキの腐りが進行していた。

写真でもわかる様に、シュラウド上側に写っているガンネル内側に緑色の苔っぽい物が見える。この辺りはこのシュラウドベースが雨水を堰き止めることで、湿気っぽくなっていた訳だ。

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内側から見ればご覧の通り。デッキだけではなく、チェーンプレートをハルに固定するためのビーム材もデッキ近くは腐っている様子がわかる。

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チェーンプレートを外してみるとこの通り、裏側に湿気が周り腐りが進行していた。

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腐って柔らかくなった部分を除去した状態。

 

木造艇の補修は、基本的に歯医者さんの治療と同じ

虫歯を削る→消毒する(防腐処理する)→詰め物をする(エポキシ樹脂を充填)→被せ物をする(新しい板を貼る)というプロセス。

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デッキ側にエポキシ樹脂充填し、新しい板で補強。

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デッキ側の腐りがかなり広く、広範囲に補強を追加。

 

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腐りを取った後にエポキシ樹脂を充填し、ビームにシュラウド固定用の補強材を追加。

補修前はハルに並行して取り付けてあったチェーンプレートをハルに垂直方向で補強材に固定。こうする事で、チェーンプレート位置を船のセンター寄りに移動することができた。

 

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チェーンプレートのデッキ貫通部は、結露で湿気るのを防ぐ為に木部と直接接しない様に周囲をエポキシ樹脂で固めている。

 

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デッキ側も修理箇所はエポキシ樹脂で固めて完了。以前のシュラウドの場所が上の方に見えている。

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新しいチェーンプレートは、ハルへの取り付け方法を変えた事で、ガンネルとの間に十分スペースを確保し、写真の様にファーラーのロープが通っても水が溜まらない。

また、新しいシュラウドベースは写真の様に、チェーンプレートとプレートの間にクリアランスを開けで、その間にもコーキング材を入れてある。プレートとデッキの間にもコーキング材を隙間なく充填している。

これで右舷側シュラウドの修理は完了。左舷側シュラウドも同じ様に移設することとしたのは、次回。

 

 

デッキは腐るよどこまでも(その1)

入手の時には・・・

艇を入手する際の説明では、腐っているのは右舷側シュラウド取り付け部と右舷ドッグハウス後部という認識。ドッグハウス後部のフレームとコックピットコーミング下のフレームはつながっているので、右舷コックピットコーミングの際にガムテープが貼ってある→船内のクォーターバース側から見ると多分腐ってる。も含まれていると理解していたが、実はここは見逃されていた。そもそも前オーナーは既に艇の面倒を余り見なくなっていたので、記憶から薄れてしまっていたり、コンディションの悪化に気づいていなかったりと、聞いてた以上に問題箇所が数々発覚してしまった。中古艇購入の際には、前オーナーの自己申告は悪気無くとも甘くなっていると認識して、自分の目でしっかり確認することが必要だったと改めて思った次第。

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右舷ドッグハウス後部をキャビン内部から。角の部分に腐りが生じている。

 

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コックピットコーミングの淵に風化したガムテープが貼ってあったので、剥がしてみると、デッキに腐りが。

木造艇はどんな所が腐るのか?

また、この年代の木造艇で気をつけないといけないのは、ハルでは無くデッキだと言う事を思い知らされた。ハルは、ウチの艇の様なコールドモールドにしろ一般的なダブルプランキングにしろ海水に接しているかドライな環境に有るので意外と腐らないが、デッキはマリングレード合板で貼られていることが多く、現代ならばマリングレード合板はエポキシ樹脂で接着されており耐久性も高いが、50年も前だど未だエポキシ樹脂は一般的でなく、フェノール系樹脂で接着されているので、マリングレードと云えども現代のもの比べるとかなりレベルが落ちる。なので、真水(雨水)が溜まる場所は間違いなく腐ってくる。更に、耐水性を上げるために、木造部の上にグラスマットを巻いたりするのだが、その端部の処理が甘いと、そこから真水が浸み込んでゆき、しかもグラスマットでカバーされる為乾きにくく、その為に内側の合板が腐ってゆくわけだ。

デッキでは特に金属部品(ボルト)の取り付け部や貫通部(チェーンプレート)などは要注意であり、金属が結露する事でも腐りは進行するとのこと。そして一番は、デッキの排水の際に水(特に雨水)が溜まり易い、あるいは排水穴が有るにも関わらず詰まり易いといった箇所は、まず腐りが進行していると考えて良い。ウチの船は正にその見本の様であった。

右舷シュラウド腐り

元々、前オーナーから左舷シュラウドの取り付け部が腐ったので修理を行っており、同じ問題が右舷シュラウドでも起こっていた。腐りの原因は、先に述べた様に金属の結露も有るが、主原因としては、この艇の現設計ではチェーンプレートがハルの内側に取り付けられている(見栄え上?)関係で、ガンネルとシュラウド取り付け金具の隙間が狭く、土ぼこりや蜘蛛の巣程度でも雨水が溜まりやすくなっていた為、腐りが進行したと考えられた。そのため、デッキ腐りの修理と合わせて、チェーンプレートを船体内側へ移設し、水はけを良くした。

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写真の通り、ガンネルとシュラウドチェーンプレートのベースが近接しており、ここに雨水が溜まることでデッキが腐ってくる。頻繁に海水を被れば問題ないかもしれないが、日本の様に雨が多い地域では致命的。


左舷シュラウド腐り

左舷側はデッキ腐りを修理してあり腐り自体は問題ないが、右舷側で行った、チェーンプレートの移設を行なった。

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数年前に修繕済みであった左舷側も右舷同様にチェーンプレートを移設する。既にまたデッキは少し怪しくなってきており、爪状の工具でほじくると脆くなっている。


ドッグハウスハッチ周り

ウチの船にはおそらく換気改善のために、コンパニオンウェイの前方にハッチが設けられている。そのおかげで真夏でもキャビン内は暑くなりすぎず、なによりヘッドルームが低いため屈まざるを得ないウチの艇で、このハッチを開けることで、キャビン内で唯一屈まないで済むことができる。

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チークのモールが付いていた所を外してみればご覧の通り。白い部分は、グラスマットが巻いてある部分だが、マットの下はグサグサに腐った状態。

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このハッチの前方は水抜き穴は有るもののかなり腐っており、当初は腐り部をほじくり出しエポキシパテで補修するつもりだったが。元の部材の腐りがひどくグラスマット一枚で形状を保っている状態で、少し力を入れると剥がれてしまった。結局、前方部はまるまる作り直さざるをえなかった。

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スターン周り

スターン周りは、まさか腐っているとは思わなかった。気が付いたのは、ハルと船底の塗装を船台にあげて作業していた時に、スターンに梯子を掛けて船に上がっていたのだが、何となくスターン周りのデッキを踏んだときの感触がおかしく(何となくふかふかしている?)感じたことだった。

原因は、下の写真でスターンから張り出しているアンカーローラーにあった。

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上の写真で、バックステーの横に見えるフラッグポールのベースは、手で触るとグラグラしており、えいっと力を入れるとご覧の通り、もげてしまった。

 

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写真の右端に、ガンネルからの排水穴が見えるが、その右側に載っているアンカーローラーの台座の中を細い排水穴が通っているため、土埃で詰まってしまっていた。結果、スターンガンネル内側に雨水が溜まって、この辺り一面腐ってしまった様だ。

 

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スターンパルピットはチークの台座で、デッキの傾斜に対して水平になる様に取り付けてあったが、台座は腐ってこの通り。

 

スプラッシュガード周り

スプラッシュガードの内側端部が両舷とも腐ってしまっていた。水が溜まる場所でもない様に思うが。

ちなみに、細い溝はコックピットオーニングの下端を咥える溝だそうだ。

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付け根の少し浮いた様な部分は腐っているので、引っ張ればすぐもげる状況。

 

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左舷側は木部そのものは未だ生きていたが、ご覧の様に大きな隙間が出来ていて、パテでは修復しきれないため、ここは除去して修理せざるを得なかった。

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コックピットハッチ周り

なぜか雨が降るとビルジ(真水)が溜まる。それも、ボトムの一番深いところではなく、ストリンガーに沿って水が伝わってきている様だが、侵入経路は不明だった。

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写真下がセンターライン。写真でわかる様にボトムの深い所以外にも、ストリンガーに沿って水が溜まっている。

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コックピットのスターンチューブ(ハッチない中央の四角い部分)点検用ハッチ。

右舷側金具部は腐りがひどく、これは入れ子を作る必要がありそう。またハッチの周りもあちこち腐っているので、エポキシパテで埋めて修理しようと思う。

 

想定外の箇所が多数見つかったが、次回以降、各部の修理について記述してゆく。



 

 

 

 

スルハル・ボールバルブとヘッドを交換する

シンプソン・ローレンス

オリジナルで付いていたヘッドは、英国製のシンプソン・ローレンス製のもの。昔はよく使われていたメーカーだが最近は国内で取り扱いが無い様だ。状態としては写真の通り汚れてはいるが、レバーを動かすと給排水は出来ている様だが、流れ方は十分でなく、おそらく内部のバルブパッキンを交換しないとダメな様だ。しかし、既に取り扱い業者が無くなっていることもあり、部品は入手できなかったため、新品に交換することにした。

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新しいヘッドは、手動式としては国内で今一番ポピュラーなジャブスコ製を採用。高さや配管の取り回しが懸念されたが、取り付けの台座位置を少し動かすだけで問題なく取り付けができた。

この写真の水面位置は喫水線と一致していて、ヘッドのレバーで排水してもまた同じ位置まで水が入ってくる。すなわち、ボールバルブが開いたままになっている訳だ。即ち、ヘッドのある左舷側にヒールすると、海水がヘッドから逆流して溢れてくる恐れがある。ボールバルブは見ての通り外観上も緑青に覆われており、バルブのハンドルを動かそうとしても、固着して全く動かなかったことから、ボールバルブは要交換となった。

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スルハルとボールバルブ

スルハルは当時のものなので全て真鍮製だ。もし腐食が進んでいる様であったら、交換するつもりだったが、幸い全て状態が良く継続使用することになった。ボールバルブはトイレ同様、新品に交換されていたシンク用以外は固着しており、全て交換した。

コックピットに溜まった水を抜くドレーンホースは劣化が進み、少し触れば裂けてしまいそうな状態であったので、ボールバルブが開いている(この部分は通常開けている)状況でもしホースが破れたら、艇はたちまち浸水して沈んでしまうところだったので、早く気づいてよかった。

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このホースとボールバルブは新品に交換。

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スルハルの状態は表面を少し削って確認する。結果、全て状態はOKだった。

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シンクのボールバルブは交換されており問題なかった。

 

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ギャレーのホースは、シンク側のアダプタが折損していたため外されていたので、シンクに接続しようとしてもボールバルブ側とシンク側の径が異なるため、変換アダプタを使用した。アダプタの結合部は、万が一を考慮して喫水線より高いと箇所とした。

 

 

 

 

ハルの塗装と船底塗装を施す

初めての上架

艇を入手後、初めて上架を行なった。ここまでのブログには未だ記載はしていないが、デッキやコンパニオンウエイ周辺のの腐りを修理したので、この上架でハル塗装、船艇塗装を行い、あと懸案だったスルハルの交換とヘッドの交換、燃料の抜き取りを行なって、回航ができるようにすると云うのが目標だ。

 

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前回の船底整備から約一年という事で、船底の汚れはまあまあといういところ。上架後、船底に着いたフジツボを落とし、ハル塗装前に旧船名を消すことと、ハル塗装の傷み部の修正を行う。

剥離剤の使用は慎重に

旧船名は、溶剤でこすって落ちるかと思い、色々試したが結局消えず往生していたものだ。そこで、塗料の剥離剤を塗布することにした。しかし、これは結果から言うと大失敗であった。船名の文字のところだけに剥離剤を塗布したが、結局その周辺の塗料がプライマーから上は全て剥離してしまい、大きな段差ができたため、パテで修正が必要になった。

 

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塗膜が剥離剤によってべろ〜んと剥がれてきた。

 

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結局、剥離剤の着いたところの剥がれは薄付けパテでは修正できないほどの段差になってしまった。

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と言うことで、パテもりもりで修正。後でペーパー掛けが大変。(青いところは最初に薄付けパテを盛っ他ところ。薄付では段差をカバーできなかった)

 

船体のヘアラインクラックを剥がしてみると

船体を隈なくみてゆくと、小さなヘアラインクラックが確認できる。これをカッターナイフの先でつつくと少し塗膜が剥がれる。これは塗料の下に薄い空間が出来ている為なので、これは剥がしてパテで修正してゆく。ところによっては、塗膜を剥がしたあと、さらに欠陥があり、ドライバーでほじくってゆくと大きな窪みになる。これはデッキの合板に施してあるグラスファイバーととハルの間に水が侵入して、結果的にデッキの合板が腐ってしまったもの。このような所は、木工用のエポキシを充填した上に、パテで修正を行った。

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こんなところが、数カ所あった。

 

この艇はチェーンプレートがハルの外に取り付けれてて無く、デッキから貫通してハル内部側取り付けられているのだが、今回、このデッキ貫通部が著しく腐食していた為、ハル内部のスリンガーを補強して、そこにチェーンプレートを移設しているが、従来ハルに取り付けていたボルトの穴埋めのパテが劣化しておりハルに穴の凹ができてしまう為、ここはエポキシで封をし、パテで仕上げた。

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エポキシ樹脂は少し硬化してきた時に、アセトンを付けたウエスではみ出し部をを拭き取ったり、同じ様にコテで盛り上がりを整形しておくと、後でペーパー掛け作業が楽になる。

 

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中目のパテはロックペイントの2液のポリパテ。薄付けは、ホームセンターで売ってるHOLTの車用のもの。(これは適度に柔らかくペーパーで加工しやすいが、せいぜい1mmくらいの段差まで。それも面積が少し大きくなると中央が凹み盛りにくい)

 

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気になるヘアラインクラックを剥がしてゆくと、段々深みにはまって、こんなに修正する羽目に。

水線部のブルーのラインは同じように剥がし、今回は手を抜いてパテのところだけ塗装した。

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f:id:chidorianshujin:20220101214844j:plainハルと船底間のブルーのラインは、塗料の色に良いものがなく、色合わせをして作る時間も無かったので、補修したところ以外塗っていない。補修部は青と黒のペイントを混ぜてそれっぽい色にして塗ってある。

 

スターン側の水線付近はあおさ海苔がこびり付いて取れにくい。上架した直後の湿っている時は、高圧水洗である程度取れるが、なかなか完全には取れない。今回はうっかり落とさないで乾燥させてしまったので、なお困難が予想されたが、Y氏の知恵で、鉄用のサビ落とし液をハケで塗布すると難なく落とすことができた。

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船底をサンディングしてゆくと塗膜の浮きが気になるところがあった。一つはスクリューシャフトの上部で、ここは以前補修したところの様だがグラスマットが浮いてきていたので、エポキシで再度固めて補修を行なった。

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スケグの先端部、ラダーの下側のヒンジを取り付けている部分を樹脂の板で埋めてあったが、経年変化で剥がれてきていたので、ここもエポキシを盛り、サンディングで整形して補修を行なった。

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樹脂のメクラ板を剥がすと真鍮のヒンジの受けが露出した。

 

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エポキシ樹脂で全体をカバー

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サンディングで整形完了。エポキシ樹脂は硬いので、サンダーでサンディングも結構骨が折れる。

ハル塗装

ハルの塗装は2液性のウレタンペイントで行なった。塗装はローラーハケを使用して、3回に分けて行なった。

ポイントはローラーハケの選定にあって、なるべく毛足が短く細いものを使用すること。そうする事で、ペイントがハケに多く含みすぎないため、ムラが出にくくなる。

塗る際には、あまり何度も同じところをコロコロ擦らない。せいぜい2回くらいに留めないと、せっかく塗った塗料をまたローラーが吸い取ってしまい、ムラになる。

塗装の2回目まではまだ少しムラが見られるが、3回目ではほとんど分らなくなる。塗膜表面は、うっすら梨地状ではあるが、余り気にならない。#400の水ペーパーで少し研いでみたが、塗膜が薄くなってしまうので、よほど丁寧に仕上げる気がある人でないと、勧められない。

ハル塗装は、大変なイメージがあったが、実際やってみると意外に簡単。しかし、ムラなく塗るには、ある程度場数を踏まないとイケナイ様には感じた。

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船底塗装

船底塗装は今まではFRP艇で、船齢もそれほど古くなかった事もあり、大まかコテとサンダーで落として、その上に塗装を施していた。しかし今回は船齢が47年と古いうえ、かなり重ね塗りを続けてきた感じで塗膜がかなり厚そうだし、木造艇でコテなどで落とす力加減も自信が持てない為、素直に重ね塗りすることにした。

船底塗料は、上架した写真でも分かる様に一年以上係留したままでもそれほど貝は付いていなかったので、前回も使用していたとされる関西ペイントマリンのプラドールZの4kg缶を2缶注文し、これを塗り切る。

ペラ周りは、かつてフジツボが付いてペラが厚くなり推進力が出なくなったり苦労したものだが、筆者が陸に揚がって休眠している間に著しい進歩を遂げており、他のメンテナンスをしている艇のペラもシャフトも全くフジツボが付いていないので聞いてみると、中国塗料のペラクリンを塗っていると言う。筆者の艇も見ればほぼフジツボは付いていないので、それか!と思い注文しようとしたが、実はペラクリンの類似品でペラコートと言う名の製品であった。こちらの方が大分安いと言うことで継続使用決定。作業は、前の塗料を落としてペーパーで整えたのち、黄色いプライマーを塗布。乾燥後ペラコートをムラなく塗るのみだ。乾燥すると透明のゴム状の塗膜になる。

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船底塗料の塗装前に、コテでフジツボを根からこそぎ落とす。実は今回手順を抜かってしまったが、上架後高圧スプレーで泥や海苔などを落とした後、未だ乾かないうちに貝落としをした方が根から剥がれやすかったようだ。今まで塗料ごとコテで剥ぐことが多かったので気にしていなかった。

フジツボを落とした後は、粗めのペーパーで元の塗膜を粗したうえでプライマーを塗布。プライマーは無くても大丈夫だが、やはり密着性が良い方が持つと言うことと、同じ色の塗料を重ね塗る際に塗り忘れに気づきやすくなる。

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プライマー塗布時には、ペラとシャフトは完全にカバーで覆う

 

塗料を塗るときには、従来ローラーハケを使用してきた。ローラーハケは平滑な面では綺麗に仕上がるが、我が艇のようにアバタだらけの凸凹だと必ず塗り残しが出るのでダメだそうだ。Y氏にハケ塗りのコツを伝授してもらった。使用するハケも漫画の看板屋さんが持っているような、最も大きく太いハケを使う。その風呂いハケの毛の先1/3位だけに塗料を浸け、船底に叩きつけるようにハケを動かして、一切塗り残し無いように塗ってゆく。キールの先端など、フジツボの付きやすいところは厚く塗ってゆく。

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ハルと船底の塗装が完了し、やっと新しい船名をカッティングシートで入れてもらう。船名のデータは筆者がパソコンで作成し、業者にて製作施工してもらった。

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船名が入ると、ぐっと締まって完成度が上がった感じがしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニス塗り開始

危うく掃除機を壊すところだった

前回投稿からなんと8ヶ月近く空いてしまったが、記憶が薄れてしまう前に備忘録として記しておく。

前回は砥の粉での下処理までであった。次に砥の粉をウエスで落としニスを塗ってゆく。

砥の粉処理の注意点

ここで一つ問題となったのは、砥の粉を落とした粉の処理だ。粉を落とすと、当然まわりじゅう粉だらけになってしまう。そこでポータブルの掃除機で粉を吸ったのだが、砥の粉の粉はかなり細かく、ある程度フィルターに溜まってくるとフィルターを通過し、本体のモーターなど時計なところに溜まってきてしまった。掃除機のスィッチがこの粉のせいで動かなくなってきたため、どうもおかしいと気づいた次第。結局、掃除機を分解して内部を清掃して、なんとか使えるようになったが、危うくダメにしてしまうところであった。

以前にも書いたが、ニスは、定評のあるインターナショナル・ヨットペイントの「ゴールドスパー」を使用した。このニスは、深い飴色で艶がとてもよい仕上がりになる。

ニス塗りのプロセス

師匠によると、まず溶剤(キシレン)で倍くらいに薄めて3回塗り、#240のペーパーで研ぐ。原液で上塗りして#240〜#320で研ぐ。そうして仕上げ塗り。できればもう2回塗るのがBest。との事であったが、下塗り3回。#240のペーパーで研いでみたものの、もとの下地が荒れすぎていて砥の粉を掛けても完全に滑らかにならなかったのでスッキリしないため、ペーパー掛けは深追いせずに中止。

上塗り、仕上げ塗りは各1回塗って終了。

だいぶ師匠の指導から端折ってサボったが、まあまあの仕上がりだと思う。

使用したハケは、ロイヤルホームセンターのお徳用パックのもの。ニスを溶くのは使い捨ての紙コップを使用してハケ共々都度使い捨てにするが、使い残しが出たら、ハケをニスに浸したまま、全体をビニール袋に包んで密閉しておけば、翌日くらいなら十分使用できた。

ハケは(安もんだから?)毛がすごく抜けるので、毛先をつまんで引っ張ってムダ毛を抜いて処理してから使わないと、塗面が毛だらけになってしまうので要注意だ。

 

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下塗り1回目(左半分)。右は下地のまま。

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下塗り1回目。

 

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下塗り2回目。

 

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下塗り3回目

 

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上塗り

 

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仕上げ塗り

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仕上げ塗り。表面は平滑では無いものの、ツヤが出て格段に綺麗になった。

ハンドレールやベンチレータのボックスも同じ手順で行なった。

ここまでは、まあ順調だったが、これからYヨットサービスさんの作業が始まると、問題箇所が続出。腐りと水漏れのなが〜い戦いが始まることになるのであった…。(つづく)