ヴァン・デ・シュタット31のドッグハウス
この頃のヴェン・デ・シュタット設計のIOR艇のドッグハウスは、本艇の様なドーム形状のものがある。当時のIORレース艇は、S&S30が代表する様に、フラッシュデッキスタイルが主流だったが、ヴェン・デ・シュタット31は、排水量がわずか2.6tの超軽排水量艇なのでフリーボードが低くデッキの下は1mほどのヘッドルームしか無い為、流石にこれではキャビン内が物置以外に使えなくなるので、チャートテーブル・ギャレーの周りだけこの様なドーム形状のドッグハウスを設けたものと思われる。当時の舵誌の試乗記事には、キャビンの写真は有るものの、居住性については何も語られていないので、この辺りの真意は不明だ。
とは言え、このドッグハウスの上部に設けられた四角い箱状の部分でも、ヘッドルームは1.6mにも少し足らない。この四角い箱の部分に本艇ではハッチが設けられているが、オリジナル設計ではこのハッチは無かった様だ。このハッチを開けると、主人のばあい丁度ここから頭がすこし出るので腰を下かめなくても良いので楽だし、夏場は意外と風が入って来て涼しくて良いと、メリットは有るがここにも問題があった。
ハッチの前のウッドガーニッシュが回っている下あたりに、影になっていて判りにくいが小さな孔が見える。これが実は大変な状態だった。
湿気が溜まれば木は腐る
ウッドモールを外してみるとご覧の通り、チーク材の枠がかなり腐っている。
内側から見るとグラスマットを巻いてある中から腐って来ている様子が分かる。グラスマットは防水には効果的だが、湿気のある部位に対して完全に巻き切る事ができないと、むしろ逆効果だ。
ほじくってみると上部の白いところは簡単にもげてしまい、チークの枠体も半分くらい無くなってしまった。当初は腐っているところだけ除去して、エポキシ樹脂を充填して修理しようと考えていたが、これでは如何しようも無い。
枠体の側面の材も前端はやはり腐っている。白い布切れみたいに見えている部分がグラスマット。前方下に見えるのは水抜き用の孔。
左舷側のハッチ枠体からウッドモールを外した状態。こちら側は右舷側より大分マシだ。
枠体全体を作り直さないといけないかと、迄絶望的な展開になりかけたが、結局大工さんにお願いして、この枠体の腐っているところを丸ノコですっかり切り取ってもらい、そこに新しい木材を現場合わせで嵌め込んでもらうことになった。
新しい木材を嵌め込んだところ。前にある細い棒状のものはウッドのモール。
痛みの少ないところはウッドエポキシを盛って補修。
側面の枠材(特に上面)と前方の新しく作成した材とが上手く合うか大工さんはかなり気にしていたが、なんとか上手くいった。
ウッドモールとの位置合わせもOK。黒いザラザラはエポキシ樹脂の充填剤で隙間を埋めてある部分。
元々はこの枠体部分は木目仕上げだったが、木をはめ込むのに丁度良い大きなチーク材が無く、材が変わってしまったことや、塗膜の耐光性を上げて防水性を確保したかったことから、ここはウレタンペイントで仕上げた。見た目も以前より軽やかで良くなったと思う。
ドッグハウス周りでは、あとスプラッシュガードの一部に腐りがあるり、これは次回に続く。