入手の時には・・・
艇を入手する際の説明では、腐っているのは右舷側シュラウド取り付け部と右舷ドッグハウス後部という認識。ドッグハウス後部のフレームとコックピットコーミング下のフレームはつながっているので、右舷コックピットコーミングの際にガムテープが貼ってある→船内のクォーターバース側から見ると多分腐ってる。も含まれていると理解していたが、実はここは見逃されていた。そもそも前オーナーは既に艇の面倒を余り見なくなっていたので、記憶から薄れてしまっていたり、コンディションの悪化に気づいていなかったりと、聞いてた以上に問題箇所が数々発覚してしまった。中古艇購入の際には、前オーナーの自己申告は悪気無くとも甘くなっていると認識して、自分の目でしっかり確認することが必要だったと改めて思った次第。
右舷ドッグハウス後部をキャビン内部から。角の部分に腐りが生じている。
コックピットコーミングの淵に風化したガムテープが貼ってあったので、剥がしてみると、デッキに腐りが。
木造艇はどんな所が腐るのか?
また、この年代の木造艇で気をつけないといけないのは、ハルでは無くデッキだと言う事を思い知らされた。ハルは、ウチの艇の様なコールドモールドにしろ一般的なダブルプランキングにしろ海水に接しているかドライな環境に有るので意外と腐らないが、デッキはマリングレード合板で貼られていることが多く、現代ならばマリングレード合板はエポキシ樹脂で接着されており耐久性も高いが、50年も前だど未だエポキシ樹脂は一般的でなく、フェノール系樹脂で接着されているので、マリングレードと云えども現代のもの比べるとかなりレベルが落ちる。なので、真水(雨水)が溜まる場所は間違いなく腐ってくる。更に、耐水性を上げるために、木造部の上にグラスマットを巻いたりするのだが、その端部の処理が甘いと、そこから真水が浸み込んでゆき、しかもグラスマットでカバーされる為乾きにくく、その為に内側の合板が腐ってゆくわけだ。
デッキでは特に金属部品(ボルト)の取り付け部や貫通部(チェーンプレート)などは要注意であり、金属が結露する事でも腐りは進行するとのこと。そして一番は、デッキの排水の際に水(特に雨水)が溜まり易い、あるいは排水穴が有るにも関わらず詰まり易いといった箇所は、まず腐りが進行していると考えて良い。ウチの船は正にその見本の様であった。
右舷シュラウド腐り
元々、前オーナーから左舷シュラウドの取り付け部が腐ったので修理を行っており、同じ問題が右舷シュラウドでも起こっていた。腐りの原因は、先に述べた様に金属の結露も有るが、主原因としては、この艇の現設計ではチェーンプレートがハルの内側に取り付けられている(見栄え上?)関係で、ガンネルとシュラウド取り付け金具の隙間が狭く、土ぼこりや蜘蛛の巣程度でも雨水が溜まりやすくなっていた為、腐りが進行したと考えられた。そのため、デッキ腐りの修理と合わせて、チェーンプレートを船体内側へ移設し、水はけを良くした。
写真の通り、ガンネルとシュラウドチェーンプレートのベースが近接しており、ここに雨水が溜まることでデッキが腐ってくる。頻繁に海水を被れば問題ないかもしれないが、日本の様に雨が多い地域では致命的。
左舷シュラウド腐り
左舷側はデッキ腐りを修理してあり腐り自体は問題ないが、右舷側で行った、チェーンプレートの移設を行なった。
数年前に修繕済みであった左舷側も右舷同様にチェーンプレートを移設する。既にまたデッキは少し怪しくなってきており、爪状の工具でほじくると脆くなっている。
ドッグハウスハッチ周り
ウチの船にはおそらく換気改善のために、コンパニオンウェイの前方にハッチが設けられている。そのおかげで真夏でもキャビン内は暑くなりすぎず、なによりヘッドルームが低いため屈まざるを得ないウチの艇で、このハッチを開けることで、キャビン内で唯一屈まないで済むことができる。
チークのモールが付いていた所を外してみればご覧の通り。白い部分は、グラスマットが巻いてある部分だが、マットの下はグサグサに腐った状態。
このハッチの前方は水抜き穴は有るもののかなり腐っており、当初は腐り部をほじくり出しエポキシパテで補修するつもりだったが。元の部材の腐りがひどくグラスマット一枚で形状を保っている状態で、少し力を入れると剥がれてしまった。結局、前方部はまるまる作り直さざるをえなかった。
スターン周り
スターン周りは、まさか腐っているとは思わなかった。気が付いたのは、ハルと船底の塗装を船台にあげて作業していた時に、スターンに梯子を掛けて船に上がっていたのだが、何となくスターン周りのデッキを踏んだときの感触がおかしく(何となくふかふかしている?)感じたことだった。
原因は、下の写真でスターンから張り出しているアンカーローラーにあった。
上の写真で、バックステーの横に見えるフラッグポールのベースは、手で触るとグラグラしており、えいっと力を入れるとご覧の通り、もげてしまった。
写真の右端に、ガンネルからの排水穴が見えるが、その右側に載っているアンカーローラーの台座の中を細い排水穴が通っているため、土埃で詰まってしまっていた。結果、スターンガンネル内側に雨水が溜まって、この辺り一面腐ってしまった様だ。
スターンパルピットはチークの台座で、デッキの傾斜に対して水平になる様に取り付けてあったが、台座は腐ってこの通り。
スプラッシュガード周り
スプラッシュガードの内側端部が両舷とも腐ってしまっていた。水が溜まる場所でもない様に思うが。
ちなみに、細い溝はコックピットオーニングの下端を咥える溝だそうだ。
付け根の少し浮いた様な部分は腐っているので、引っ張ればすぐもげる状況。
左舷側は木部そのものは未だ生きていたが、ご覧の様に大きな隙間が出来ていて、パテでは修復しきれないため、ここは除去して修理せざるを得なかった。
コックピットハッチ周り
なぜか雨が降るとビルジ(真水)が溜まる。それも、ボトムの一番深いところではなく、ストリンガーに沿って水が伝わってきている様だが、侵入経路は不明だった。
写真下がセンターライン。写真でわかる様にボトムの深い所以外にも、ストリンガーに沿って水が溜まっている。
コックピットのスターンチューブ(ハッチない中央の四角い部分)点検用ハッチ。
右舷側金具部は腐りがひどく、これは入れ子を作る必要がありそう。またハッチの周りもあちこち腐っているので、エポキシパテで埋めて修理しようと思う。
想定外の箇所が多数見つかったが、次回以降、各部の修理について記述してゆく。