ちどり庵主人の木造ヨットライフ

約10年間、ヨットから遠ざかっていた筆者が復帰するににあたり、憧れだった木造艇を手に入れ再開したヨットライフの顛末を綴る。

ハルの塗装と船底塗装を施す

初めての上架

艇を入手後、初めて上架を行なった。ここまでのブログには未だ記載はしていないが、デッキやコンパニオンウエイ周辺のの腐りを修理したので、この上架でハル塗装、船艇塗装を行い、あと懸案だったスルハルの交換とヘッドの交換、燃料の抜き取りを行なって、回航ができるようにすると云うのが目標だ。

 

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前回の船底整備から約一年という事で、船底の汚れはまあまあといういところ。上架後、船底に着いたフジツボを落とし、ハル塗装前に旧船名を消すことと、ハル塗装の傷み部の修正を行う。

剥離剤の使用は慎重に

旧船名は、溶剤でこすって落ちるかと思い、色々試したが結局消えず往生していたものだ。そこで、塗料の剥離剤を塗布することにした。しかし、これは結果から言うと大失敗であった。船名の文字のところだけに剥離剤を塗布したが、結局その周辺の塗料がプライマーから上は全て剥離してしまい、大きな段差ができたため、パテで修正が必要になった。

 

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塗膜が剥離剤によってべろ〜んと剥がれてきた。

 

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結局、剥離剤の着いたところの剥がれは薄付けパテでは修正できないほどの段差になってしまった。

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と言うことで、パテもりもりで修正。後でペーパー掛けが大変。(青いところは最初に薄付けパテを盛っ他ところ。薄付では段差をカバーできなかった)

 

船体のヘアラインクラックを剥がしてみると

船体を隈なくみてゆくと、小さなヘアラインクラックが確認できる。これをカッターナイフの先でつつくと少し塗膜が剥がれる。これは塗料の下に薄い空間が出来ている為なので、これは剥がしてパテで修正してゆく。ところによっては、塗膜を剥がしたあと、さらに欠陥があり、ドライバーでほじくってゆくと大きな窪みになる。これはデッキの合板に施してあるグラスファイバーととハルの間に水が侵入して、結果的にデッキの合板が腐ってしまったもの。このような所は、木工用のエポキシを充填した上に、パテで修正を行った。

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こんなところが、数カ所あった。

 

この艇はチェーンプレートがハルの外に取り付けれてて無く、デッキから貫通してハル内部側取り付けられているのだが、今回、このデッキ貫通部が著しく腐食していた為、ハル内部のスリンガーを補強して、そこにチェーンプレートを移設しているが、従来ハルに取り付けていたボルトの穴埋めのパテが劣化しておりハルに穴の凹ができてしまう為、ここはエポキシで封をし、パテで仕上げた。

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エポキシ樹脂は少し硬化してきた時に、アセトンを付けたウエスではみ出し部をを拭き取ったり、同じ様にコテで盛り上がりを整形しておくと、後でペーパー掛け作業が楽になる。

 

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中目のパテはロックペイントの2液のポリパテ。薄付けは、ホームセンターで売ってるHOLTの車用のもの。(これは適度に柔らかくペーパーで加工しやすいが、せいぜい1mmくらいの段差まで。それも面積が少し大きくなると中央が凹み盛りにくい)

 

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気になるヘアラインクラックを剥がしてゆくと、段々深みにはまって、こんなに修正する羽目に。

水線部のブルーのラインは同じように剥がし、今回は手を抜いてパテのところだけ塗装した。

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f:id:chidorianshujin:20220101214844j:plainハルと船底間のブルーのラインは、塗料の色に良いものがなく、色合わせをして作る時間も無かったので、補修したところ以外塗っていない。補修部は青と黒のペイントを混ぜてそれっぽい色にして塗ってある。

 

スターン側の水線付近はあおさ海苔がこびり付いて取れにくい。上架した直後の湿っている時は、高圧水洗である程度取れるが、なかなか完全には取れない。今回はうっかり落とさないで乾燥させてしまったので、なお困難が予想されたが、Y氏の知恵で、鉄用のサビ落とし液をハケで塗布すると難なく落とすことができた。

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船底をサンディングしてゆくと塗膜の浮きが気になるところがあった。一つはスクリューシャフトの上部で、ここは以前補修したところの様だがグラスマットが浮いてきていたので、エポキシで再度固めて補修を行なった。

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スケグの先端部、ラダーの下側のヒンジを取り付けている部分を樹脂の板で埋めてあったが、経年変化で剥がれてきていたので、ここもエポキシを盛り、サンディングで整形して補修を行なった。

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樹脂のメクラ板を剥がすと真鍮のヒンジの受けが露出した。

 

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エポキシ樹脂で全体をカバー

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サンディングで整形完了。エポキシ樹脂は硬いので、サンダーでサンディングも結構骨が折れる。

ハル塗装

ハルの塗装は2液性のウレタンペイントで行なった。塗装はローラーハケを使用して、3回に分けて行なった。

ポイントはローラーハケの選定にあって、なるべく毛足が短く細いものを使用すること。そうする事で、ペイントがハケに多く含みすぎないため、ムラが出にくくなる。

塗る際には、あまり何度も同じところをコロコロ擦らない。せいぜい2回くらいに留めないと、せっかく塗った塗料をまたローラーが吸い取ってしまい、ムラになる。

塗装の2回目まではまだ少しムラが見られるが、3回目ではほとんど分らなくなる。塗膜表面は、うっすら梨地状ではあるが、余り気にならない。#400の水ペーパーで少し研いでみたが、塗膜が薄くなってしまうので、よほど丁寧に仕上げる気がある人でないと、勧められない。

ハル塗装は、大変なイメージがあったが、実際やってみると意外に簡単。しかし、ムラなく塗るには、ある程度場数を踏まないとイケナイ様には感じた。

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船底塗装

船底塗装は今まではFRP艇で、船齢もそれほど古くなかった事もあり、大まかコテとサンダーで落として、その上に塗装を施していた。しかし今回は船齢が47年と古いうえ、かなり重ね塗りを続けてきた感じで塗膜がかなり厚そうだし、木造艇でコテなどで落とす力加減も自信が持てない為、素直に重ね塗りすることにした。

船底塗料は、上架した写真でも分かる様に一年以上係留したままでもそれほど貝は付いていなかったので、前回も使用していたとされる関西ペイントマリンのプラドールZの4kg缶を2缶注文し、これを塗り切る。

ペラ周りは、かつてフジツボが付いてペラが厚くなり推進力が出なくなったり苦労したものだが、筆者が陸に揚がって休眠している間に著しい進歩を遂げており、他のメンテナンスをしている艇のペラもシャフトも全くフジツボが付いていないので聞いてみると、中国塗料のペラクリンを塗っていると言う。筆者の艇も見ればほぼフジツボは付いていないので、それか!と思い注文しようとしたが、実はペラクリンの類似品でペラコートと言う名の製品であった。こちらの方が大分安いと言うことで継続使用決定。作業は、前の塗料を落としてペーパーで整えたのち、黄色いプライマーを塗布。乾燥後ペラコートをムラなく塗るのみだ。乾燥すると透明のゴム状の塗膜になる。

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船底塗料の塗装前に、コテでフジツボを根からこそぎ落とす。実は今回手順を抜かってしまったが、上架後高圧スプレーで泥や海苔などを落とした後、未だ乾かないうちに貝落としをした方が根から剥がれやすかったようだ。今まで塗料ごとコテで剥ぐことが多かったので気にしていなかった。

フジツボを落とした後は、粗めのペーパーで元の塗膜を粗したうえでプライマーを塗布。プライマーは無くても大丈夫だが、やはり密着性が良い方が持つと言うことと、同じ色の塗料を重ね塗る際に塗り忘れに気づきやすくなる。

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プライマー塗布時には、ペラとシャフトは完全にカバーで覆う

 

塗料を塗るときには、従来ローラーハケを使用してきた。ローラーハケは平滑な面では綺麗に仕上がるが、我が艇のようにアバタだらけの凸凹だと必ず塗り残しが出るのでダメだそうだ。Y氏にハケ塗りのコツを伝授してもらった。使用するハケも漫画の看板屋さんが持っているような、最も大きく太いハケを使う。その風呂いハケの毛の先1/3位だけに塗料を浸け、船底に叩きつけるようにハケを動かして、一切塗り残し無いように塗ってゆく。キールの先端など、フジツボの付きやすいところは厚く塗ってゆく。

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ハルと船底の塗装が完了し、やっと新しい船名をカッティングシートで入れてもらう。船名のデータは筆者がパソコンで作成し、業者にて製作施工してもらった。

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船名が入ると、ぐっと締まって完成度が上がった感じがしてきた。